~ 獣医療におけるがん免疫療法 ~

動物には病気や怪我に対して自分で治そうとする免疫力(白血球のリンパ球)という自然治癒力が備わっており、体内にできたがん細胞や体の中に侵入した細菌やウイルスを攻撃して死滅させます。
免疫細胞療法は、このような生まれつき備わっている免疫の力を利用したり、免疫の力を強めたりすることで、がんの発症や進行を抑える治療方法です。

がんの治療には、1. 外科手術、2. 化学療法、3. 放射線療法の三大療法がこれまで主流を占めてきました。
これに継ぐ第4の療法として、またがん治療特有の苦痛を伴わない普通の生活を送れるようなQOL(Quality of Life)の改善を高める治療法として、がん免疫療法は、世界中で研究され、臨床的な効果が得られる治療法になりました。

(1)活性化リンパ球(CAT)療法

イヌ、ネコの血液(10-12ml)からリンパ球を回収し、薬剤を加えてリンパ球の活性化・増殖を行ないます。
その後、およそ1,000倍に増えたリンパ球を洗浄・回収し、点滴で体内に戻します。


(2)樹状細胞ー活性化リンパ球(DC-CAT)療法

すりつぶしたがん細胞(腫瘍組織)を、樹状細胞と一緒に培養します。
樹状細胞はリンパ球にがんを特異的に攻撃させるための目印を持つ細胞です。
この樹状細胞と活性化して1,000倍に増やしたリンパ球を投与することで、よりがん細胞に対して特異的にリンパ球を攻撃させる療法です。


Q & A

Q. がんは治りますか?

A. 免疫療法では、進行がんや末期がんは完全に治すのは難しいと言われています。
一方がんの進行を止めたり、再発防止する効果、QOL(生活の質)を改善する効果は大いに期待できます。
がんは再発が最もおそらしいことですので、手術後にがんの再発を防止することは効果的な治療であると考えられます。

Q. 副作用はありますか?

A. 副作用は軽い発熱がたまにみられる程度です。
自己のリンパ球ですので、重篤な副作用の報告はありません。

Q. 投与頻度はどのくらい?

A. 投与の間隔、回数は、病状を見て相談して決めます。
標準的な治療では、2週間に一回投与を4~6回、その後は月に一回投与を4~6回行います。
その後、検診にて、治療の終了、中断、継続を検討します。

Q. 他の治療との併用はできますか?

A. 可能です。
抗がん剤や、放射線治療、あるいは漢方療法等との併用は、お互いの治療タイミングを考慮して頂ければ、むしろ高い効果が期待できる可能性があります。
併用にあたっては、かかりつけの獣医師の先生にご相談ください。

Q. 入院は必要ですか?

A. 点滴は30分程度で終わります。
動物の状態によりますが、年のため半日程度預からせて頂くと安心です。

Q. 費用はどのくらい掛かりますか?

A. 投与回数、免疫細胞療法の種類により異なりますので、当院にご相談ください。