〜 医療における幹細胞療法 〜

動物の体には、さまざまな器官や臓器などに変化する(「分化する」といいます)細胞が存在します。
この細胞は幹細胞(かんさいぼう)と呼ばれ、幹細胞療法とは、この細胞を体外で培養し、イヌやネコの体に戻してあげることで、失われた臓器や怪我の再生を行う治療法です。



イヌの皮下脂肪から単離して培養した
脂肪幹細胞の顕微鏡写真(200倍)



幹細胞療法では、2種類の幹細胞を利用します。
ひとつは骨髄に含まれる骨髄液中に存在する骨髄幹(こつずいかん)細胞、もうひとつは皮下脂肪の中に含まれる脂肪幹(しぼうかん)細胞です。




骨髄や皮下脂肪由来の幹細胞は、骨や、軟骨、筋肉や心筋細胞、そして血管を形作る細胞に分化することが知られています。
幹細胞療法は、これらの分化する能力を利用することで、自分の細胞から必要な器官や臓器を「再生」させる治療法なのです。







(1)骨髄幹細胞療法(MSC療法)




イヌまたはネコの骨髄液を採取し、幹細胞だけを特殊な容器で前培養します。
その後、本培養をして、細胞の数を増やしてから、細胞を集め、洗浄して、患部への直接の注射や、点滴によって体内に投与します。







(2)脂肪幹細胞療法(ADSC療法)




脂肪幹細胞は皮下脂肪に存在しています。
イヌまたはネコの脂肪組織を少しだけ採取し、特殊な酵素液で分解して幹細胞を単離、特殊な容器で細胞を前培養します。
その後、本培養をして、細胞の数を増やしてから、細胞を集め、洗浄して、患部への直接の注射や点滴によって体内に投与します。






Q & A

Q. 幹細胞って?

A. 動物の体にある細胞は、もとになる細胞からいろいろな器官や臓器を形成する細胞に変化します。
この変化を「分化」するといい、このもとになる細胞が幹細胞です。
もともと骨髄や脂肪組織に含まれる幹細胞は、筋肉、心筋、血管、骨、軟骨に分化することが知られています。
いわゆるiPS細胞やES細胞のような万能細胞とは異なり、分化する細胞が限られているのが特徴です。


Q. 幹細胞療法ってなに?

A. 病気のイヌやネコから脂肪組織や骨髄液を少しだけとり、そこから増殖させた幹細胞を用いて、ダメージを受けた患者の細胞や組織を修復したり再生したりする治療法を指します。
その際用いる幹細胞は、血液中に投与される場合もありますし、患部に直接移植される場合もあります。


Q. どのような病気に効果があるの?

A. 幹細胞は、骨折癒合不全や脊髄損傷、また炎症性の関節炎で治療の研究が進められています。
骨折癒合不全では、幹細胞が骨の周囲にある骨膜(こつまく)や、骨細胞、また栄養を運ぶ血管に分化することで骨折部位を修復していくと考えられています。
また、脊髄損傷では、幹細胞が血管へと分化し、損傷部位の血流を回復することで、神経細胞の伸長を補助したり、脊髄全体の再形成を促すと考えられています。
関節炎では、幹細胞は関節に新たな軟骨や骨膜を形成させ、痛みを和らげたり、炎症を回復させると考えられています。


Q. どうやって脂肪や骨髄をとるの?

A. 脂肪をとるときは局所麻酔(全身麻酔の場合もあります)を行い、パチンコ玉程度の大きさをとります。
骨髄液をとるときは、全身麻酔を行い、少量の骨髄液を採取します。


Q. 入院は必要ですか?また費用はどのくらいかかりますか?

A. 動物の状態や病気の種類によります。
詳しくは当院にご相談ください。